核融合炉の多様性

生物学的な戦略の一つとして,多様性を否定される人はほとんどおられないと思う.
我々は様々な種を作り,様々な環境に適応できるようにして生命の流れを作ってきた.
核融合装置にも当然そのような流れがあり,トカマク型というものがある.これは皆さんご存知のようにトーラス状をした磁場閉じ込め型核融合装置である.一方,ヘリカル型というものも存在し,これは外部コイルをうねうねと複雑な形状にすることで回転変換を生じさせる形式であり,主に日本において大きな発展を見せた.岐阜県にあるLHD,京都大学にあるヘリオトロンJやその前身であるヘリオトロンEなどは,1950年代に日本の科学者宇尾光治が発表したヘリオトロン配位の大成果と見ていいだろう.
こういった型の多様性がなぜ必要なのかと言えば,トカマク型ではブートストラップなどによりプラズマ電流の変化による回転変換が起こるため,危険な有理面の形成およびプラズマの崩壊に繋がるが,ヘリカルでは外部コイルで回転変換を行えるためプラズマ電流は必要ではなく閉じ込め性能の向上が見込まれるという所にある.
ではヘリカル型だけ開発を行えばいいではないか,というが世界の主要な装置はトカマク型であったし,DEMO炉であるITERもトカマク型である以上,トカマク型の研究を止めるわけにはいかない.
それに先に述べた多様性という趣旨から見ると,トカマク型だけ研究するのもヘリカル型だけ研究するのも,研究の結果どちらかがダメとなった場合に磁場閉じ込め型核融合装置の開発自体が頓挫してしまう.それは非常によろしくない,ということで両方の研究が進んでいるのである.
高校生時代の私は非常に浅はかだったので,なぜどちらか片方のみに傾注しないのか,などと考えていたが,多様性を許容できるレベルのうちは多様性を重んじた方がプロジェクトの成功率は上がるよねということに気付いていなかったのである.

パリ20区,僕たちのクラス

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Parisにある公立中学の授業を描いたドキュメンタリー映画で,すごくリアルなフランスの授業風景を教えてくれる.授業の進め方が私の通う大学のフランス人先生のそれと全く同じなので,ある程度の整合性は保証されているのだろうと思う.脚本にそってキャラクタナイズはされているものの生徒が起こす問題というのが凄くリアル.先生に対する揚げ足取りだとか,生徒同士の言い争いだとか,フランスの授業妨害は日本のに比べればずいぶん自己主張の激しいものだなぁと思ったり.
そう,皆自分を主張するんですね.「私が」嫌だから教科書を読まない,「私が」気に入らないから授業なんて受けなくていい,と本心でそう思っているかどうかは分かりませんが大義名分としてはそう振る舞う.日本では逆ですよね.根底にあるのは「私が」受けたくないから授業を受けたくないはずなのに,恥ずかしさ,奥ゆかしさ(?)なんかを理由に行動する.
この行動の違いが面白かったです.
あと,向こうはスキルを身につけるために55分授業を用意するというビジネスライクなのも面白かったですね.