大学の熱学の時間に習ったバッキンガムのπ定理について証明がどこにもなかったのでサクッと参考図書を読み込むことにしました。
今回参考にしたのは次のページ
http://www.math.ntnu.no/~hanche/notes/buckingham/buckingham-a5.pdf | 2010-10-25 |
今回証明したいのは次のtheorem
物理の基本単位がm個、現象に関する物理量がn個の場合、n個の物理量のうち(m+1)個を選んで一個の無次元量を作ることができる。
物理量はメートルや秒といった単位系、基本単位というのは速さや長さといった物理量をいくつか組み合わせたものと考えます。
ただ、これだと無次元量に任意性はあるのか?無次元量の個数はm-n個なのか、mCn個なのか判別つかず応用が利きません。そこでもう少しclearlyな次のtheoremを考えます。(こっから超引用モード)
Any physically meaningful relation Φ(R1, . . . ,Rn) = 0, with Rj = not0, is equivalent to a relation of the form(π1, . . . ,πn−r ) = 0 involving a maximal set of independent dimensionless combinations.
まぁ、ざっくり和訳すると「n個の物理量がr個の物理的に意味のある基本単位系を作るとき(*注ここ原文では全然違うこと言ってますよ!)、その物理量の関係Φ(R1, . . . ,Rn)=0と無次元量の関係(π1, . . . ,πn−r )=0 は同値である」
という主張ですね。これが証明できれば、
n個の物理量からr個の基本単位系を作ると、そのr個の基本単位系を使ってn-r個の無次元量を作り出せる
ということが系として導き出せます。わぁ便利。
では以下、証明の概略です。
①物理量の単位をRとするとそれはいくつかの基本単位の積であらわせられます。
このとき基本単位が物理的に独立であるとは
⇒
と仮定します。この仮定が一番大事!
②基本単位から物理量への変換のFの乗数を並べたものを縦ベクトルRiと思います。つまり
今、n個のベクトルの変換を考えていますからこのベクトルはn個存在します。
このn個のベクトルを並べたものを次元行列(原文では、the dimension matrix)と定義し、Aと表記します。
③ここでRの積はと書けることに注目します。物理的に独立である仮定から
となります(λがλを成分に持つベクトルになっていることに注意。)
これはAはn個の物理量からm個の基本単位への変換の行列表示とみると、Aはカーネルを持つことを意味しています。
④Aのランクが基本単位への変換の個数rであることは直感的に分かります。(この辺りの詳しい証明は原文ラスト2ページ辺り。)。なのでカーネル空間のdementionはn-r個。これをであらわします。
ここで⇔の一対一対応関係を考えます。初めに仮定した物理量の関係式をかましても一対一に対応します。で、写像をかました場合でもR成分は添え字の取り方によりませんから、結局もとの定理が証明できました。
一番、大切なところは「物理的に意味がある」という解釈をどうするか、でしょうか。意訳(というか結果から逆算しまくった。こういうことが言いたいんだろうな、的な)しまくったので原文を読むのが一番だと思われます。
僕の理解はこれぐらい。この理解だと、物理量から基本単位への変換のカーネル空間が無次元量になる(書いてて思ったんですが当たり前ですね)。
というわけで一番初めの定理も
物理の基本単位がm個、現象に関する物理量がn個の場合、作り出す無次元量の個数を最大にする場合、n個の物理量のうち(m+1)個を選んで一個の無次元量を作らざるをえない(作ることが必要である)
という感じでしょうか。ちょっと力の抜けた定理になってしまいました。
なんで基本単位への変換を一旦定めれば無次元量の定まり方は一意に定まりまるわけで
「つまり、レイノルズ数は、流れとか長さとかそういう基本単位を作ったことから必然的に導き出せるものなんだよ!」
→ΩΩΩ「な、なんだってー!!!」
実際、粘性流体の基本単位として質量,長さ,時間をとると物理量を熱量と取ろうがメートルと取ろうが力と取ろうがレイノルズ数は導けます。
まぁとりあえず無次元量の数は、n-r個あるのか、nCr個あるのかという気持ち悪さがなくなっただけ良しとしましょう。(もちろんn-r個です)